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Midnight Sun

エンターテインメントの記事を書きます。

「チャイナタウン」

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私立探偵ジェイク・ギティスの事務所に、
ミセス・モーレイと名乗る、LAの水道電力局の
チーフエンジニアの妻が現れ、
夫の浮気の調査を依頼する。
ギティスは早速調査を開始。
まずモーレイの身辺を洗い、
彼がロサンゼルス川に異常な関心を持っていること、
町をあげての新ダム建設には物理的な理由で反対であること、
そして若い娘のような恋人がいるらしいことをつきとめた。
その矢先にモーレイの浮気がゴシップ新聞で暴露され、
弁護士を伴った本物のモーレイ夫人が名誉毀損で訴えるべく
事務所に乗り込んできたのだ。
最初の女は何者で、目的は何だったのか?
独自に事件を調べ始めたギティスだったが、
モーレイが溺死体となって発見される。

 

パラマウント映画の重役、
ロバート・エヴァンズ
脚本家ロバートタウンに
『華麗なるギャッツビー』の執筆を依頼した。
エヴァンズは12万5000ドルのギャラ提示をしたが、
タウンはそれを蹴り、30年代のLAを舞台にした
ハードボイルドを構想中なのでそれを一緒に
やらないかとエヴァンズに逆提案。
ギャラは2万5000ドルで契約した。
エヴァンズはこの時のタウンは高潔だったと叙述)
主役にはタウンの親友、ジャック・ニコルソン
起用することが決まった。

 

およそ300ページもある分厚い脚本に
エヴァンズは目を回す。まるで理解できない
脚本だったという。
そこで、妻のシャロン・テイトを
惨殺された深手から立ち直れていない
ロマン・ポランスキーにその脚本を送り、
彼をLAに呼び戻した。
ポランスキーは「なんとかする」と
「チャイナタウン」の監督を承諾。

 

ヒロインのイブリン・モウレー役は
ジェーン・フォンダにオファーされていたが
フォンダは原発問題にかかりきりで降板。
当時、エヴァンズの妻だったアリ・マッグロー
候補だったが、スティーブ・マックイーンとの
不倫が エヴァンズにバレ、役を失った。
(ついでにギャッツビーのヒロインもだ)
結果、『俺たちに明日はない』とは異なった路線を
求めていたフェイ・ダナウェイに着地することになった。

 

この映画で何より好きなのは"雰囲気〟だ。
1937年のロサンゼルスが舞台となっていて、
パッカードなどのクラシック・カーや、
オーソドックスなスーツなどの美術が
まったく嘘くさくない造りになっている。
冒頭は尾行の方法で観ている側を唸らせる。
(懐中時計の使い方など)
脚本家のロバート・タウンは、
ジャック・ニコルソンの普段の言動をもとに、
このギティスというキャラクターを
創造したと語っている。
事実、言葉遣いがやや乱暴だが、
ニコルソンが自然な演技をしているのが
こちらにも伝わって来る。

 

当初、音楽はフィリップ・ランブロという
別の作曲家だったが、映画のイメージに
音楽が合わず、エヴァンズが却下。
急遽、ジェリー・ゴールドスミスに交代。
ゴールドスミスはわずか8日間で、
チャイナタウンの音楽を製作させた。

 

撮影中はスタッフや出演者たちの
確執が絶えなかったそうだが、
救いようのない結末を含めて、
心に突き刺さる傑作サスペンスである。

 

ダナウェイの父親、LAのフィクサー
ノア・クロス役は、『マルタの鷹』や
『黄金』などの傑作を遺した
今は亡き名監督ジョン・ヒューストン
監督になる前は役者志望だったらしく、
強烈な個性も相まってノア・クロスの役にピッタリ。
プライベートでは五度の結婚、撮影地のアフリカで
象の狩猟に熱狂し、撮影そっちのけになったとか
かなり豪胆な人物である。
ポランスキー自身もカメオ出演し、
ニコルソンの鼻を切る小男を不気味に演じた。
法廷に羊を乱入させ、怒りをぶちまける羊飼いの男は
監督ロン・ハワードの父親である。

 

またこの作品自体、
ジョン・ヒューストン監督の
マルタの鷹』にかなり影響を受けており、
オマージュの場面がいくつも出てくる。
ポランスキーブラウン・ダービーから
出てきたギティスとイブリンの横顔と背景の
構図が好きだそうで、インタビューでも
言及している。
ポランスキーは「ハードボイルドは一人称描写に限る」
とこの作品を例に持論を述べている。 
私が大好きな同監督の『フランティック』も
一人称で描かれている。
私が好きなシーンは、冒頭の浮気写真、
偽モウレー夫人との会話、ギティスが
理髪店で聞いてきた与太話を披露するくだり、
登記所での不遜な係員とのやりとりなどである。

 

吐き気を催すような、
イブリンとノア・クロスの暗い過去、
ルー・エスコバーとギティスの確執、
かつてチャイナタウンで恋に落ちた女性を
死なせてしまった苦い経験があるギティス。
彼の早とちりが思わぬ悲劇を招き寄せる。
警察の手を逃れるため、
イブリン落ち合う場所として選ばれたのは、
LAのチャイナタウン。
ギティスに胸には追憶が去来する。

 

ラストの展開については、意見が180度分かれ
大揉めした。結局はポランスキーの意見が通ったが、
作品中、唯一のアカデミー賞を受賞したのは
皮肉なことにロバート・タウンだった。(オリジナル脚本賞受賞)
この作品がハッピーエンドだったとしたら
どうだっただろうか?
私はこれほど真剣にレビューを
書かなかったかもしれない。
因みにこの作品は、デヴィッド・リンチ
デヴィッド・フィンチャーも好きな作品として
挙げている。

 

参考出典、ロバート・エヴァンズ著「くたばれ!ハリウッド
「チャイナタウン」のDVDの特典インタビューより。