Midnight Sun

エンターテインメントの記事を書きます。

ペドロ・アルモドヴァル「トーク・トゥ・ハー」

 
フリー・ジャーナリストのマルコは
女闘牛士、リディアを取材し、恋仲になる。
しかし、リディアが闘牛の事故で昏睡に
陥ってしまう。病院で知り合った介護士の
ベニグノは昏睡に陥った若きバレリーナ、
アリシアの介護を献身的に行っている。
病院で知り合ったマルコとベニグノは
次第に親しくなっていく。
 
映画の中に天才と呼ばれる人は多いが、
現代、この人の才能に匹敵する人は稀だ。
ペドロ・アルモドバルの作品はどれも
人の深奥に触れる作品をたたきつけてくる。
トーク・トゥ・ハー」は
年に何度も鑑賞する映画である。
なぜこの映画に惹かれるのだろうか。
私は他に「ライブ・フレッシュ」という
作品が特に好きだ。
 
ピナ・バウシュの舞踏、
カエターノ・ヴェローゾによる
「ククルクク・パロマ」の生演奏、
ミニチュア化した男のサイレント映画
飽きさせない要素が随所に盛り込んである。
ただの映画ではない。
 
4人の登場人物が複雑に絡み合う。
女闘牛士のリディア、
ジャーナリストのマルコ
介護士のベニグノ、
バレリーナ志望のアリシア
マルコとベニグノの間の感情は、
友情なのか、あるいはゲイ的なものなのか
判断がつかない。
「人間愛」なら着地できるかもしれない。

展開もスムーズで、描写は直接的ではないが
かなり衝撃的でもある。
この映画の「昏睡」と「覚醒」は
実際の事件を基にしている。
バレリーナの講師役を務めるのは、
C・チャップリンの実の娘である。
 
何より2人の「眠り姫」の運命は忘れがたい。
そして、思わせぶりな未来を感じさせる
ラストも見事だった。
 
ちなみにこの映画、脚本家の大御所、
山田太一さんもお気に入りだそうだ。